会長コラム“展望”

こどもの日に考えたこと

2012/06/01

社会


5月5日はこどもの日、この日にちなんで総務省が「我が国のこどもの数」という統計を発表している。この統計の要約では下記のように記されている。

 1. こどもの数(15歳未満)は1,665万人、31年連続の減少

2. こどもの割合は13.0%、38年連続の低下


終戦間もない昭和25年時点では、こどもの割合は35.4%もあった。この比率が年々減少し、今では3分の1になってし まった。一方で、65歳以上の高齢者の比率は、わずか4.9%だったものが、今日では23.7%と5倍弱に増えている。まさに高齢社会、葬儀や仏壇仏具、 お墓の業界が伸び盛りでいいですな、などと異業種の方にうらやましがられるのは、この社会における高齢者の比率が高く、さらに伸びるだろうということが根拠になっている。


さて、ここから粗い計算を行ってみよう。

こどもの割合は今後どうなっていくのか

総理府統計局のデータによれば平成22年に生まれたこどもは1,071(千人)で、15歳人口が1,219(千人)、よって0〜14歳人口は148(千人) のマイナスになる。これらの数値は当面大きく変動することはなさそうだから、0〜14歳人口は、十万人台の減少が今後も続くものと推測される。これは総人 口に対して、0.1%程度の減少になる。つまり、0〜14歳のこどもの比率は、これからも0.1%程度ずつ減少が続くものと予想される。


高齢者の割合は今後どうなっていくのか

同様のデータで、65歳の人口は1,427(千人)、一方、高齢者から退出した人、つまり死亡人口は、1,197(千人)だから、65歳以上人口は 230(千人)のプラスである。これは総人口に対して0.17%だからインパクトがそれほど大きいとは言えない。しかし、この数字は平成22年つまり2010年のもの。この年に65歳を迎える人は1945年生まれで、第二次世界大戦の終わった年のため出生数は少ない。この出生数が、1947年からは激増しており(第1次ベビーブーム)、今年からこのベビーブーム期に生まれた人たちが高齢者の仲間入りをするのだ。統計によれば、今年65歳になる人口は 2,133(千人)である。(平成22年の時点で63歳の人口を当てはめた)。死亡人口は1,200(千人)程度だろうから、差し引き90万人以上の人が、今年高齢者の仲間入りをする。これは総人口の0.7%にも値する。ベビーブーム期に対応してこのような傾向が数年続き、そしてそこまでは急激ではないにせよ、その後も高齢者の比率は高まっていく。これが今後10年〜20年のわが国の傾向である。


さて、ここで残りの比率、つまり15歳〜64歳の生産年齢人口の比率に目を向けてみよう。これは昭和25年の時点で、59.7%、それが平成7年に69.5%と高まりを見せ、平成24年が63.3%であるから、この比率は驚くほどは変わっていない。そして平成16年までは日本人の人口は増えていたわけだから、生産年齢人口 は基本的に右肩上がり(人口ボーナス期)だったわけであり、これが戦後の奇跡的ともいわれた経済成長の理由である。

そして、これから起こることは、先ほど検証したように、こどもの比率は大きくは下がらない、そして高齢者の比率は大きく上がる。従って、生産年齢の大きな減少(人口オーナス期)が続くという目を覆いたくなるような現実なのである。

総人口が減少し、生産年齢の比率が減少する。もちろん国内の人口、需要だけで経済成長が実現されるわけではないが、このような状況の中で経済成長を実現することは、よほど優秀な人材が国をマネジメントしない限りは難しいことは誰の目にも明らか。バブル経済の崩壊という特殊な問題のために低成長を余儀なくされたわが国は、今度は生産人口の減少というかなり根源的な問題のために低成長、というより、おそらく緩やかな衰退を余儀なくされるわけだ。

この数字を見て、皆さんは何を考えるだろうか?


株式会社鎌倉新書

代表取締役 清水祐孝