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会長コラム“展望”

個人的価値観 2017.08.01

自分のアタマで考える

 シンガポールという国は、観光旅行で訪れるなら華やかで楽しいイメージだが、暮らしてみるとあまりすることがない。私は走る、泳ぐを繰り返しながら、ひたすら「考える」時間を過ごしている。「考える」と言っても、投資のことばかりではない。とりとめのないことでも何か頭に浮かぶと、ひたすら考え込んでしまい、ほかのことを忘れてしまう性分なのだ。

 一時期は早朝や夕方に一人でゴルフをしていたが、つい「考える」ほうに気を取られてしまうので、カートを運転していて池に落ちそうになったり、前の組のプレーヤーがいるのに気が付かず打ち込んでしまったりした。ゴルフもやりすぎると腰に悪いということもあって、最近はやめてしまった。泳いでいる最中に考えすぎて、気を失ってしまったこともある。ジョギングも同じで、「考える」ことに没頭して上の空で走り続け、交通事故に遭いそうになる怖い思いを何度もした。

(生涯投資家 村上世彰)


 毎朝、会社まで歩いて出社している。自宅を出て、まずは近くの神社でお詣りする。そこからぶらぶら、おおよそ50分の道のりだ。暑い日が続くこのごろは会社に着くころには汗だくになっている。元来早起きなので、通勤を短時間で済ます必要もないし、歩けば多少は運動不足の解消にもなる。そう思って始めてみたが、速足で歩くわけではないし、体重が減ったわけでもないので、この目的にはあまり役立っていないのかもしれない。


 でも、この50分間は一日の中で最も充実した時間だ。それは、歩きながらいろいろなことを「考える」ことにこの時間を使っているからだ。特に月曜日の朝などは、iPhoneにダウンロードした「大前研一ライブ」(毎日曜日の夜に大前研一氏が、一週間の出来事について解説している有料番組)を聞きながらあれこれ考えているから、週の初めのこの朝は一週間の中でも特に楽しい時間の過ごし方だ。


 さて冒頭、村上世彰氏(“村上ファンド”と言えばわかりますよね)の最新刊の著作から一部引用させていただいたのは、自分にも同じ経験があったからだ。ちょうど今と同じような暑い夏の休日、会社の近くを考えごとをしながら歩いていて、大通りの交差点を赤信号と気づかずに渡っていたのだ。正確に言えば、赤信号に気づかなかったのではなく、そもそも交差点を渡っていることに気づいていなかったのだ。ものすごい音でクラクションを鳴らして、急ブレーキをかけた車は幸運にも数メートル前で停止したが、撥ねられていても何らおかしくない恐怖の経験であった。


 どうしてあの時、周りが見えないほど考え込んでいたのか、思い出すことはできない。それからは、できるだけ気を付けるようにしているのだが、どんな状況下で周りが見えないほど考え込んでしまうのかがわからないから、根本的な安全策は見いだせていないということになる。


 引用の部分に話を戻すと、わたしは自分が村上氏と同じような経験をしていた、ということが素直に嬉しかった。社会を変えるチャレンジをした素晴らしい人物だと思っているからだ。こんなことを書くと、直接本人を知らないからそう思うのだよ、などと否定的な意見を言う人もたくさんいるのかもしれない。でも意見の所有者は私自身であり、それを他人に押し付けようと思っているわけでもないから、ご容赦いただくとしよう。


 社会は常に変化しているから、時代によって本来あるべき社会の姿も当然変わる。そこで、さまざまな領域で社会をあるべき姿に変えようとチャレンジする人材が時折現れる。ところが、そこには変化すると都合が悪い、既得権を持った人や組織がたくさんいて、変革を企てる人材をあの手この手で潰しにかかる。当初は既得権者の力は強く、いっぽうで変革者には味方が少ない。その上、大衆は事の本質が分からない。結果として、当初の変革者の企ては徹底的に叩きのめされることになる。ところが時間が経ってくると、後から変革者に続く人たちが出てきてだんだん力を持ってくる、結果として時間はかかるものの社会は徐々に変化していく。


 歴史で言えば、幕末にこのような役割を担った人材が出てきて社会は変化した。村上氏をここに当てはめると、彼は日本の企業ガバナンスを変えようとしたわけで、最近では日本の政治における統治機構を変えようとした橋下徹氏も同じ部類に属する人材なのだろうと思っている。


一生懸命に考えてきた人の話を聞き、
一生懸命に考えてきた人の本を読み、
一生懸命に自分のアタマで考える。
その考えに従って、一生懸命に行動する。


 この本で村上氏の伝えたかったこととはおそらく全く異なる読後感でたいへん申し訳ないが、この当たり前で重要なことを改めて感じた次第。


株式会社鎌倉新書 代表取締役社長
清水 祐孝