会長コラム“展望”

つながりのサポート業

2011/03/01

ビジネス


「鎌倉新書さんの月刊仏事は、葬儀社や石材店の情報ばかりで私たち仏壇仏具店の情報は少ないですよね」。

先日行われた仏壇仏具業界の集まりでそのようなことをある経営者に言われた。

確かに、月刊仏事は仏壇仏具業界のみならず、葬儀業界、石材業界までを網羅していて、ひとつの業界に特化したものではない。

しかし、それぞれの業界の中では 消費者と相対している業者(小売店、消費者向けサービス)に対する情報を旨としているし(私たちは職人さんには関心がない)、基本的に葬儀や石、仏壇の文化的な側面あるいは(どこそこの社長の子息が結婚したみたいな)雑ネタは入れず、もっぱらビジネスに特化した誌面構成となっている。

同時におおよそ100ページの誌面の中はだいたいバランスが取れているはずだし、仮に3分の1ずつの情報だとしても、それで内容が薄いとは思っていない。む しろ、1つの業界に特化して毎月100ページもの誌面を構成したならば、前述のようなビジネスにとって不必要な情報をたくさん入れなくてはならなくなりさえする。


さて、筆者はそのような反論を冒頭の経営者にしたのかと言えば、全くそんなことはない。

もっと言えばそのようなことは、どうでもい いことだと考えている。

申し上げたことは概略以下の通りであり、これが私たち鎌倉新書の考えていること=理念となっている。そして、この考えに従って商品 やサービスを企画制作している。


「仏壇店の取り扱っているものは、仏壇という仏さまやご先祖さまに手を合わせ、信心や感謝の気持ちを捧げるための道具であり、それを販売することが仏壇店の仕事です。しかし、もう少し突き詰めて考えれば、お客さまは仏壇の購買を通して家族とのつながりを感じ、その後の日々のおつとめを通して、亡くなった方とのつながりを感じているのではないのでしょうか。

そうであるならば、仏壇店がお客さまに提供する価値の本質は、家族や亡き人とのつながりをサポートすることにあると言えるのではないのでしょうか」

「葬儀社は、一連の葬儀式を取り仕切ることでお客さま(喪主やその周りの人々)に対してサービスを提供する仕事ですが、葬儀という通過儀礼はそれを通して、家族やその周りの人たちとのつながりを感じ、そのありがたさを知る大切な場面だと私たちは考えています。ですから、葬儀社の提供する価値も仏壇店と同様、家族や亡き人とのつな がりをサポートすることだと私たちは考えています。このことは、お墓を販売する石材店も全く同様だと思っています」

「つまり、仏壇店も葬儀社も石材店も取り扱っている商材は異なるものの、提供する価値は同じで、家族の死という非日常な状況に陥って、そこから家族や人と人とのつながりの意義、 もっと言えば人生の意義を感じようとしている人をサポートしたり、サービスしたりすること、これが供養に携わる業界の提供する共通の本質的な価値だと私たちは考えています。鎌倉新書はそのような考えに沿って商品やサービスをつくらせていただいていますし、そのことは当然、月刊仏事のコンセプトでもあるわけです」


こんな偉そうなことを言ったわけではないが、内容はほぼ以上の通りである。

さて、もう一度考えて欲しい。葬儀、仏壇仏具、お墓にはそれぞれ長い歴史があり、それぞれの意義が存在する。

もちろん、このことを否定するわけではない。

ただ、社会は日々変 化し、人の価値観も変わっていく中で、お仕着せの価値観を盲従するのではなく、今日の消費者がどこに価値の重点を置いているかを考えてみるべきではないだ ろうか。

繰り返しになるが、葬儀・仏壇仏具・石材という供養を取り巻く業界は、儀式の進行だとか、木製品の販売だという視点から枠組みを変 え、人と人とのつながりをサポートしているのだ、という視点に立てば、お客さまと接する場面、あるいはそれ以外のすべての場面での意識や行動が変わってい く。そして、そのことがお客さまの満足につながっていく。そのように私たちは考えている。


株式会社鎌倉新書

代表取締役社長 清水祐孝