会長コラム“展望”

今年はどんな年に?

2014/12/27

社会

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

この原稿を書いているのは選挙戦の真最中というタイミングなのだが、皆さんに読んでいただくころには結果は明らかになっている。きっと、安倍さんが「アベノミクスが国民の支持を得た」などと威張っているのだろう。でも現況は、4月に消費税を上げてからというもの、経済統計の数値は2四半期連続で大幅なマイナス成長に陥っており、巷間では先行きが心配されている。そんなタイミングなので、アベノミクスは失敗だったのではないかという議論が盛り上がっているようだ。

積極的な財政政策で、無理やり需要を作り出すことは、国家が健全な財政基盤を持っているのならば構わないのだろうが、日本はそうではない。現に、消費税引き上げの延期を決めたら、さっそく日本の国際は格付けが引き下げられてしまった。大胆な金融緩和は、円安に向かっているという意味では、確かに効果があったのかもしれないが、恩恵を受けるのは一部のオールドエコノミーの輸出企業ばかり。むしろ、輸入物価の上昇が本格化して、必要以上のインフレになりそうでなんだか怖い感じがする。

だいたい、物価上昇率を2%にするなんてぶち上げていたけど、所得が増え購買力が増して、物価が上昇するのならいいけれど、単に円安になって物価が上昇するのであれば、実質的には貧しくなっているってことなのではないだろうか。円安で物価が上がったり、原油安が直接、間接に波及して電気代やガソリンをはじめとしたさまざまな商品の価格が下がったりする中で、単純に物価を2%上げるなんて目標は、意味あるのだろうか、詳しい人は教えてほしい。

そして、大問題だと思うのは第3の矢の成長戦略だ。規制改革だとか、諸外国との経済連携だとかは進んでいる形跡は見られない。

わたしのような経済素人の感覚では、アベノミクスがうまくいっているとも、今後良くなっていくという気もしない。むしろ失敗して強烈なインフレになりやしないかと心配をしているぐらいだ。けれど、デフレ経済が20年も続いてきた中で、何も変えてこなかった歴代のリーダーとは違い、大きく変えようとしてきたこと、自らの信念に沿って手を打っていることは評価していいと思っている。そして、そのリーダーがたぶん、もう4年間やることになるのだろうから、うまくいくことを望むしかない。

今年はどのような1年になるのだろうか。先のことは誰もわからないのだけども、デフレ経済は終わったという意識で商売を考えたほうが良さそうだ。良いインフレか悪いインフレかは知らないが、傾向としてはそっちだと感じる。吉野家は牛丼を300円から380円に値上げするという。たった80円と思うなかれ、率で言えば25%以上の強烈な値上げである。牛丼が200円台で食べられる時代は、もう終わってしまったのだ。ニトリの売れ筋商品の価格は、1年前に比べて1.5倍から2倍に上がっているという。デフレ時代に率先して価格を下げてプライスリーダーの地位を築いた家具小売店が、この1年でまったく異なる戦略を実行しているのである。

供養に関連する業界を見回してみると、そんな発想をしている企業はほとんど見られない。でも、仕入れた商品のコストは必ず上がってくるはずだ。ただ単純に安さを標榜してお客を得ようという考えは、必ずどこかにしわ寄せが来る。そして、最後は自分にツケが回ってくる。今年あたりは、ツケ回しが利かなくなる会社が続出しそうだ。こんなのんびりとした業界も再編の流れを避けることができないことになるのだろう。


株式会社 鎌倉新書

代表取締役社長 清水 祐孝