会長コラム“展望”

米国が125%なら中国も125%

2025/04/12

社会

米国が125%なら中国も125%

 米中の企業と消費者の未来の財産を元手にした、トランプさんのカジノでの“火遊び”がエスカレートしている。レイズ(ポーカーにおいて、相手のベットに対して掛け金を上乗せすること)したら習近平さん率いる中国は降りると踏んでいたのに、習近平さんは掛け金を上げてきた。これは想定外だった。そこでもう一回上げてやろう、そうすればさすがに今度は降りるだろう、そう思ってやってみたら、また掛け金を上げてきた。「いくらでも上げてみろ、とことん付き合ってやる」というのが今の中国の姿勢だ。これはまったくの想定外だった。

 こうなるとトランプさんは分が悪い。その理由は米国という民主主義国家と中国という専制主義国家との違いという点から説明できる。

 関税率競争がエスカレートすると、その代償を払わされるのは双方の国家にある企業であり、そして消費者である。モノが売れなくなった企業、そしてモノが高くなった消費者においては、不満が蓄積されていく。「なんでトランプがやりだしたカジノの掛け金を、俺たちが払わなくちゃならないんだ!」という話である。

 さて、民主主義国家の米国には来秋、中間選挙がある。こうした状態が続けば、米国民は現政権にノーを突きつけるだろう。もともと共和党と民主党の差にそれほど大きな違いはなかったのだ。ということで、トランプさんは負ける。一方、3期目の習近平さんの任期は2027年までだが、こちらは一党独裁国家。ゆえにいくら企業や消費者に不満がたまったとしてもこれを力で抑え込むことで、4期でも、いやなんならそれ以降も再選は可能だろう。

 というわけで、米中の報復関税戦争は状態が続けば、先に音を上げるのはトランプさんである可能性が高い。“ディール”に勝って国民を喜ばせるつもりが、負けて国民にツケを払わせることになりかねないのだ。

 焦ったトランプさんは、必死に呼びかけるだろう。「友人の習近平さん!」なんて言いながら。トランプさんの“カジノディール”は、こうした“想定外”をいろいろな局面で招いていくに違いない。すでにマーケットは、カジノでの負けを織り込み始めたように見えなくもない。

 世界中は、トランプさんの下品な駆け引きに付き合わされることに辟易としており、逆にそうした国々同士が、互いの距離感をじわじわ縮めていきそうだ。関税ディールで大勝ちしているように見えて、実は大ピンチの瀬戸際にあるトランプさん。はたして巻き返しやいかに。


株式会社鎌倉新書
代表取締役会長CEO 清水祐孝

画像素材:PIXTA