2025/08/01
個人的価値観
友人に連れられてなかなか予約の取れないレストランに行ってきた。この人気レストランを1年も前に予約したらしく、「プラチナチケットが当たったようなものだぞ」とうそぶく彼の誘いに乗ってみたのだ。店の食事はすべての客に対して同じ時間から一斉に出されるとのことだったので、渋滞にでも巻き込まれて18時の予約時間に遅れてはいけないと思い早めに会社を出発した。レストランに着いたのが10分ほど前。間に合ってよかったと思い入口の扉を開けようとしたら、なんと鍵がかかっている。周りを見渡すと、同じ客なのだろうすでに数人が暑い中店の前で立っていた。
鍵が開けられ、お店に入れてもらえたのはほぼ18時。そこからわたしたちは確かに美味しい食事とそれによく合うお酒をいただくことができた。そして、これまた驚くような高い金額を支払って店を出たのが20時を少し過ぎたころ。外には数時間前のわたしたちと同じように待たされている20時半からの客が列をなしていた。
さて、このレストランはどうして予約客を外で待たせるようなことができるのだろうか。あるいは高額の料金を徴収することができるのだろうか。答えはこうだ。
「外で待たされたり、高額の食事代を受け入れる人数(需要)が、店の提供できる席数(供給)を上回っているから」である。
食べログなどの情報サイトや予約システム、翻訳技術の向上などテクノロジーの進展により情報流通が容易になったこと、さらにコロナ禍以降は多くの外国人が日本に押し寄せたことで食に関心を持つ人がいわゆる「美味しいお店」に対する恒常的な需要過多を生み出した。一方で、供給側の「美味しいお店」はこうした背景から生み出された爆発的な需要の増加に追い付かない。こんな構図が、上述のようなレストランの大繁盛を生み出しているのだ。
また、近年の都心部の不動産価格の上昇も同じ構図だと考えられる。訪日外国人の増加で日本の魅力を知る人が増え、都心部での不動産の購入に対するニーズが高まる。またそれを見越した投機的なニーズも拍車をかける。これまで世界的に見た東京の不動産価格はニューヨークやロンドン、あるいは香港のような著名な大都市に比較して割安であったことも関係してくるのかもしれない。いずれにせよこうした需要の爆増に対して、物件の供給が足りていないのだろう。以上の2つの事例で言いたいことはこうだ。
需要の変化に目を凝らすこと。変化が生まれているのはどの領域か
それに対して供給が追いつかない状態にあるか否か
ひとことでいえば、タイトルの通り「何が過多で何が過少か?」を見極めることが大切、ということだ。
米中摩擦で話題のレアアースは、世界的な需要拡大に対して供給不足気味であったところに、圧倒的な産出シェアを持つ中国が輸出に制限をかけたことで、もはや価格上昇どころか調達できるかどうか、という物資になっている。
金やビットコインの価格上昇は、通貨とは異なり(通貨は国の状況が悪くなるとどんどん印刷されるリスクがある)供給がほとんど増えないという特性に対して、世界中のマネーがあふれている状況が進んでいることから説明できる。わたしはこのことに最近気が付いたが、ビットコインに早くから投資して来たのは慧眼の人だと思う。とはいえ時価総額はまだMicrosoftやApple以下であり、金と比較するとまだ10分の1程度らしいから、まだまだ上昇するのだろうな、なんて個人的には思ったりしている。
最後に手前味噌で恐縮だが、わたしたちのビジネスについても触れておこう。わが国の高齢社会が今後もますます進行していく中で、さまざまな「終活」に対する需要は年々増加している。一方で、適切な情報やサービスの供給はそれに見合っていない。ここにビッグチャンスがあるとわたしは信じている。これをやりますので、皆さま楽しみにお待ちください。
株式会社鎌倉新書
代表取締役会長CEO 清水祐孝
画像素材:PIXTA