2026/01/01
個人的価値観
新年おめでとうございます。
2025年もいろいろな出来事があった。国際関係でいえば前半はトランプ関税による世界経済の混乱が毎日のように大きく報道されていた。もちろん日本もその影響を受けた。最終的に関税については当初心配されたほどのダメージにはならなかったものの、米国への法外な投資を受け入れざるをえなくなるなどの不利な条件を飲まざるを得なかった。そして後半は高市早苗首相の不用意とも思える発言をきっかけとした中国との関係悪化があった。
こうした日米問題、日中問題はいずれも世界から見た日本のプレゼンスが大きく低下していることが背景にあるのではないかというのが個人的な感想だ。特に中国は、すでにGDPで日本の5倍近くとなっているし、成長率にも差があるから今後も経済規模的な格差はどんどん拡がっていく。軍事力も経済規模の拡大に伴って強大になっているだろう。AIをはじめとした最先端技術でも多くの分野でわが国より進んでいる。米国が仕掛けた関税戦争にも、米国の農産物の輸入停止や、レアアースの輸出停止をちらつかせることで難なく乗り切ったし、戦争で疲弊するロシアも中国の後ろ盾なしには国際社会での地位の維持は難しい。今や中国は自信満々の世界の強国なのだ。さらに全面的に日本を支える姿勢を見せてくれていた米国も、最近は「お金を出せば支えてやる」といった姿勢なのだからなおさら分が悪い。高市首相は古いモノサシで隣国を捉えているのではないかと心配になってしまった。そんなこんなで、これからの世界は米中が圧倒的なパワーで君臨、日本も欧州も蚊帳の外となる。そんな将来予測をテーマに書こうと思ったが、それは次回以降のテーマとしたい。今回は、これまでにここで書いてきた過去の予測を振り返り、まあまあ当たっているよなと思ったので、そのことについて書いてみることにしたい。
①デフレからインフレの時代への予測
マイナス金利政策が終了したのは2024年3月のこと。直近では長期金利が大きく上昇し、銀行のビジネスも正常化するなどインフレ時代の到来が叫ばれ、これが長期化しそうな雰囲気だ。しかし本稿では、すでに2022年の段階でインフレ社会の到来を予測している。当時の原稿をChatGPTに要約してもらったのが以下だ。
25年前、着物産地の多くが人件費格差を背景に海外へ生産移転している実態を見て、仏壇産業も同じ道をたどると予測した。当初は否定的な声もあったが、人材不足とコスト差から海外生産は現実となり、合理性は最終的に産業構造を変えた。この現象は日本経済全体にも当てはまる。
90年代以降のグローバル化と中国の低廉な労働力、IT革新により、物価も賃金も上がらないデフレが長期化した。しかし近年、資源高や円安、地政学リスクによりグローバル化は後退し、安価に供給される仕組みは崩れつつある。現在の物価上昇は好景気型ではなくコストプッシュ型だが、構造的要因が強く、30年続いたデフレから継続的なインフレ社会への大転換点にある可能性が高い。(2022年11月「長期デフレからの構造転換」)
②人手不足の時代から人余りの時代への予測
今、世の中は人手不足が叫ばれているが、社会はこれを解消すべくテクノロジーを進化させ続けるから、どこかの時点で人余りの時代が来ることを予測した。AIがデスクワーカーを代替し、ロボットがブルーワーカーを代替し、運転はすべて自動化される時代が到来したときに、生身の人間にはどれだけの仕事が残されているのだろうか。そんな不安を2023年の時点で予測していた。
そして最近では人間の仕事をAIに代替させつつあることを示す具体的なニュースが頻繁に報道されるようになった。ただ、AIは生産には役立つが消費には役立たない。そんな中で社会はどのようにバランスを取っていくのか、こうした点についても直近に指摘している。
飲食店での配膳ロボットやQRコード注文、タクシー業界における自動運転の進展、さらに生成AIの登場など、テクノロジーは気づかれない速度で人間の仕事を代替し続けている。現在は人手不足が深刻で、低い失業率や賃金上昇が注目されているが、この状況こそが省人化・自動化を一層加速させている。飲食、運送といった現場労働に加え、生成AIはホワイトカラーの仕事にも踏み込み、代替の波は広範囲に及ぶだろう。
結果として、人手不足を凌駕する「人が余る社会」への転換は避けられない。短期的な完全雇用に安心するのではなく、仕事を失った人々をどう処遇し、格差や分断をどう抑えるかが、長期的に見た最大の課題となる。(2023年7月「人手不足の先の先」)
2年前に、人手不足の先にはテクノロジーによる労働代替が進み、やがて人手余剰の時代が来ると予測したが、近年その兆しが現実味を帯びてきた。
AIを牽引する米巨大テック企業では、好業績にもかかわらず大規模な人員削減が進み、AIによって一部の高度人材さえ代替され始めている。AIは人間より正確で効率的に仕事をこなすため、10人で行っていた業務が半分の人員で可能になり、雇用減少は避けられない。
一方、AIは生産には貢献しても消費はしないため、生産と消費のバランスが崩れる懸念もある。人手不足の楽観論の裏で、雇用、消費、社会制度を根本から揺るがす大転換が迫っている。(2025年9月「人余りはすでに始まっている」)
③中国には勝てないトランプ大統領(おまけ)
2025年の春先に米中の関税率引き上げ闘争が勃発した。一時は米国の対中関税が125%〜145%まで達したが、結局は中国からの譲歩は引き出せず、関税の適用停止や引き下げが行われ現在に至っている。米中の経済上の密接なつながりや、政治体制の違いといった構造的な見地からこのような事態になることを予測していた。そして現状でも米国は中国からの譲歩はほとんど引き出せていないように見える。
トランプ前大統領は関税を武器にした米中対立を、カジノのようなディールとして仕掛けたが、中国は想定に反して一歩も引かず、報復関税を重ねて対抗している。関税競争が激化すれば、そのコストを負担するのは両国の企業と消費者であり、不満は確実に蓄積される。
民主主義国家である米国ではこうした不満は選挙を通じて政権に跳ね返るが、一党独裁の中国では不満を抑え込み、長期戦に耐えることが可能だ。その結果、先に音を上げるのは米国側である可能性が高い。
強気のディールは、国民に負担を押し付ける形で裏目に出かねず、世界はこの危うい駆け引きに振り回されながら、米国以外の国同士が距離を縮めていく局面を迎えている。(2025年4月「米国が125%なら中国も125%」)
以上、予測は当たらずとも遠からずってやつで、まあまあその通りになっているのでは。という、自画自賛で終わらせていただきます。本年も引き続きよろしくお願いいたします。
株式会社鎌倉新書
代表取締役会長CEO 清水祐孝
画像素材:PIXTA