会長コラム“展望”

4人世帯は少数派
〜さらなる変化を余儀なくされる供養関連産業の今後〜

2012/07/31

ビジネス


家族葬、直葬、家具調仏壇、ミニ仏壇、永代供養墓、etc。このようなワードはここ最近になって、その存在感を高めてきた供養関連産業(主に葬儀・ 仏壇仏具・墓地墓石に関わる産業)の商品・サービス群である。これらの商品・サービスは提供する側にとっては、1顧客あたりの販売単価が下がるわけだか ら、必ずしもウェルカムというわけではないが、最近では何しろ顧客からの要望が多いため、消極的ではあるがこのようなニーズに応えてきた。

しかし、売り手からすれば粗利益の率は変わらなかったとしても、その絶対額は減るし、その分を数で補おうとしてもそもそも単価が下がったからと言って需要が増えるものでもない。何より、供養関連の産業は構造的に1人の顧客を集めるためのコストが大きいわけであるが、販売単価が下がったからといって、このコストが下がるわけではないからこのような簡素化の流れはつらいところである。供養関連の産業は高単価、高粗利の商品・サービスを扱っている、他所の小売業から見れば全く羨ましい産業であるのだが、それは集客に苦労がなかった時代の話であって、今日ではそのコストがずしりと重くのしかかっていて決して楽ではない産業なのである。


では、冒頭で述べたような商品・サービスは今後もどうなっていくのかをデータをもとに見てみよう。

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〔表〕 は1つの世帯に暮らす人の数を時系列で表したものである。昭和60年(1985)の時点では、わが国では4人世帯の数が最も多く、標準世帯と呼ばれ日本の家族の典型であった。4人あるいはそれ以上の世帯では、そのほとんどが家族の跡を誰かが継ぐことができた。そして、供養関連産業は、このような当時の標準的な世帯をメーンターゲットとしてビジネスを行ってきたわけだ。


四半世紀後の平成22年(2010)、最も多いのは2人世帯、次に単身世帯となり、4人世帯は大きく減少した。もちろん、4人世帯は標準世帯でも何でもない。昭和60年の時点と、平成22年の時点で世帯数の比率を表したものが、 〔円グラフ〕である。ざっくり、4人以上の世帯を中心に供養関連産業がビジネスを行ってきたとすれば、その比率は45.5%から四半世紀の時を経て、 24.7%に激減してしまったのである。大まかにトレンドを理解するのであればデータはこれで十分であろう。そして、今後も少なくとも数十年はこのような傾向が続くことは疑う余地がなく、この社会構造の変化にそれぞれの企業がどのように対応していくのかが問われているのだ。大ざっぱに言ってしまえば、供養関連産業は昭和の時代に、ニューファミリーの激増と安定的な経済成長という上りのエスカレーターをすいすい駆け上がり、平成の時代に家族の小型化と経済の停滞という下りのエスカレーターを必死に駆け上がっているのである。

上りのエスカレーター時代を経験している多くの企業は、自らを変えずに冒頭の消費者ニーズを特別なものと未だに捉えている。

その特別なものが、一般的なものだと悟った時、その企業に体力は残っているのだろうか?


株式会社鎌倉新書

代表取締役 清水祐孝