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会長コラム“展望”

個人的価値観 2017.11.01

足し算の人生、引き算の人生

 月に何度か証券会社の全国の支店で終活セミナーを行なっている。先日、ある大手証券会社の担当者から「さまざまなテーマでセミナーを開催しているが、終活に関するセミナーは集まりが最も良いテーマ」だとお聞きした。


 店舗での対面営業中心の証券会社の場合、ネット証券とは異なり顧客層に高齢者の割合が高く、終活に興味や関心を持つ層と重なるということなのだろう。どこに行ってもたくさんの高齢者が会場を訪れてくれる。


 終活に関わるネットサービスを事業とするわたしたちにとっても、聞きにきてくれた方々が近い将来お客さまになっていただける可能性もあるし、同時に当社の株主になってもらえるかも知れないわけだから、このような機会はとてもありがたい。


 とはいえ、ひとくちに終活と言っても来場者にとってそれはさまざまなわけで、それこそ相続のことからお墓をどうしよう、といったことまで興味関心はバラバラのようだ。短い時間でそれらの異なるニーズに一つひとつ合わせてお話しすることはできないので、ほとんどのセミナーでは「終活」についてどう考えるかという大きなテーマについて話をさせていただくことにしている。このテーマについて書くと長くなってしまうので詳細は端折るが、終活は大きく3つの分野があると話している。

1.自らや家族のためにやっておくべきこと
一般的には終活とはここを指している。財産の行き先について決めておくことや、家族に迷惑をかけたくないからといって、終末期医療や死後の葬儀あるいはお墓をどうするかについて決めておくことなど。

2.やり残したことをやりきること
死を目前にして「こうすればよかった」「これをやっておきたかった」といった後悔をすることがないように、やっておきたかったことにチャレンジすること。勉強や旅行、社会貢献など人それぞれの価値観の中で重要項目はあるものだ。

3.生きた証を残すこと
コンピューターやITの発達によって、有史以来初めて(大げさだが)簡単かつ低コストで生きた証が残せるようになった。これまで歴史上の人物の業績は、後々の研究者の仕事によって解明されているのが一般的だが、今日では誰が何をやってきたかは、その気にさえなれば(物理的には)数百年、数千年も残すことができる。人生を総括して、考えを文字にすることや、画像や映像をデジタル化することはこの時代に生きてきたからこそできる終活の一つである。


 終活については、相続や終末期医療あるいは死後の葬儀やお墓など、自らや家族のためにやっておくべきことの点ばかりがクローズアップされるが、これにはやっかいな問題が横たわっている。それは、ニーズはあるけどウォンツがない、つまり必要性は感じるけどワクワクしない、だからやらなくてはと思いつつも先延ばしにしてしまいがちなことである。結果的に何も決めることができずに、残された家族が法律や慣習に従って粛々と処理をしていくということになってしまう。


 これでは「終活セミナー」に対するニーズは高まっても、「終活そのもの」に対するニーズは高まらない。そこで、一般的に言われている終活の定義を見直さなくてはいけないと考えてきた。そんな中で上記の2や3の考え方を取り入れることによって終活に必要性だけではなく、前向きに取り組みたいという意識を芽生えさせられないかという思いから、セミナーでこのような取り組みを行っているわけである。

 さて、こんなセミナーを頻繁にさせていただいていると、「偉そうにしゃべっているオマエの終活はどうなんだ」ということを考えざるを得なくなる。最後にこの点について少しだけ書いておきたい。


 現在54歳のわたしが、平均寿命まで生きるとしてのこりは27年(81-54)程度、そこから健康寿命との差(平均9年程度、だけど多少健康は損ねても何もできないわけじゃあないだろうからその中間ぐらいまではOKとしよう)を考慮すると残りはあと20年ぐらいだろう。


 そこでこんな作業をしてみた。20年先に自分が立っていると想像してみる。次にその時点でやっておきたいこと、やらなきゃ後悔するだろうなと思われることをじっくり考えてみる。そして、現在の時点で手を付けていないことの差分を認識する。これが残りの人生で取り組むべきことだ。


 これまで、その時々に立っている地点から、より良い未来を求めて生きてきた。これからは人生のラスト地点から、今立っている地点を見つめて、残りの時間でその差分を埋めていこうと思う。前者が足し算の生き方ならば、後者は引き算の生き方といえるのかも知れない。


 人生のある一定の地点までは足し算、残りは引き算で生きてみるって考え方は面白いんじゃあないかと、最近ひとりほくそ笑んでいる。


株式会社 鎌倉新書   
代表取締役会長 清水祐孝