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会長コラム“展望”

個人的価値観 2018.03.01

価格と価値

わたしたちの会社は1月が決算月なので、2月からは新たな期のスタートとなる。そこで先般、社員のほとんどが参加するキックオフ合宿を行った。働く仲間が増えてくると、なかなかすべての人たちと十分に話をする機会が取れなくなってくることが悩みとなる。最近はそのような状況だったので、期初のミーティングという意味以上に、たくさんの仲間とコミュニケーションを取るとても良い機会を得ることができた。


夜の懇親の席である若い社員が、こんな質問をしてきた。「ビジネスマンとして自らが成長するためには何をすべきでしょうか」と。未だ青二才のわたしが、この質問に適切にアドバイスができるのかは疑問ではあったが、真剣な眼差しに対するレスポンスは人生の先輩として当然必要である。


そこで答えておいたのが、月並みではあるが「たくさん本を読むこと」ということだ。当たり前すぎてつまらない話だが、この効用を過小評価している人が世の中にはあまりにも多いと思うので、このことを書いておこうと思う。


稲盛和夫さんは、わが国を代表する経営者としてつとに有名な人である。おそらく彼は60年以上にわたって、経営はどうあるべきか、人はどう生きるべきか、についてだれよりも深く考え続けてきた人物だと言ってもおそらく文句は出ないだろう。そんな人物が、長年にわたって一所懸命に考えてきたことから得られた重要な教訓を例えば二百数十頁の書物に纏めてくれている。


たとえば彼の「生き方–人間として大切なこと」という作品は書店で2000円足らずで売られている。この2000円という価格は、出版社が著者に払う印税をはじめ、印刷や製本、物流等のコスト、問屋や書店のマージンを積み上げた上で、どれぐらいの冊数が売れるかを勘案して決められている。売り手が決定する価格はおおよそそのようにして決まるのだが、一方で(買い手が感じる)価値は全く異なる。この著作のメッセージを真摯に受け止め、自らの仕事や日々の生き方にその考えを生かそうとする人からすれば、数百万円、あるいは数千万円の価値があると考えるのではないだろうか。わたしはそのように思うわけだが、数千万円は大げさ過ぎると言われるかも知れないので、ケタを少し下げよう。仮に少なく見積もって、この本によって読者が20万円の価値を得ることができたとしよう(それくらいの納得感はあるでしょ)。


売り手のつけた価格=2,000円
買い手の得られた価値=200,000円


このように考えると、「生き方–人間として大切なこと」は、ここから真剣に学びを得ようと考えている人にとっては99%ディスカウントで売られていることになる。これはバーゲンセールで特別につけられた価格ではない、常にこの価格で買うことができるのである。


価格は売り手がつけたもので、これが買い手の考える価値とイコールあるいは、価格が下回った場合に買い手はその物やサービスを購入する。バーゲンセールとは価格を価値と見合った水準まで下げることで購買を促進させる企業行動である。そのように考えると、書物というものは、買い手の学ぶ姿勢次第で常にスーパーバーゲンセールが行われている世界なのだ。


経営者、芸術家、プロスポーツ選手などなど、一つの道を長年にわたって探求し続け、一流の域に達した人は、どうやら学び得たことを伝える役目があるようで、多くのプロフェッショナルが著作や講演等を通して、そのエッセンスをわたしたちに伝授してくれる。わたしたちが人生の中でさまざま々な領域を極める経験ができるのであれば、他人様からの学びは必要ないのかもしれないが、わたしたちに与えられた時間には限りがあり、いくつもの分野で一流になることは難しい。そんな中で、実体験を積み重ねた人が得られた学びを共有してくれる。この学び自体、人生にとって有益なものだと思うし、また他人様からの学びは自らの専門領域と重ね合わせることで、新たな気付きを生むことにもなる。


他人様から学ぶことで、自らの人生を充実したものに近づける機会があるというのに、それを活用しないのは、もったいないことだと思うのだ。

株式会社鎌倉新書

代表取締役会長 清水祐孝