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会長コラム“展望”

ビジネス 2019.05.01

専門性を極める

 ゴルフに全く関心のない人でも、タイガー・ウッズの名前を知らない人はいないだろう。説明するまでもないが、若い頃から大きなトーナメントを何度も制するなど、さまざまな偉業を成し遂げたゴルフ界のスーパースターである。その彼が、先般行われた世界最高峰の大会であるマスターズで14 年ぶりに優勝したのだ。


 加齢のせいか早起きに拍車がかかる中で、未明から放映されているこの大会はわたしの楽しみのひとつ。ところが今回はいつもと様相が異なっていた。例年だと、月曜日の早朝5 時から6 時ぐらい(現地は日曜日の夕方)は最も盛り上がっている時間帯なのだが、今年はテレビのスイッチを入れたときにはすでにトーナメントが終了していて、画面のテロップには「タイガー・ウッズ14年ぶり優勝!」なんて流れている。どうやら現地の天候の状態を考慮して、スタート時刻を早めた結果、日本の早朝にはトーナメントは終わっていたのだ。


 結果が分かっているゲームを見ることほどつまらないものはない。ということで、残念なことにテレビ観戦の楽しみがなくなってしまった。余計なお世話だが、気の抜けたビールのような番組を放送せざるを得なかったTBS は視聴率が激減したに違いなく、とても気の毒ではあった。


 ゴルフというスポーツは面白いと思う。わたしにとって、それは「打った回数(スコア)=数字、を競うゲーム」としての面白さではない。プレーをしていると、上手くいったり、上手くいかなかったりして、つまり幸運や不運がない交ぜになって自らに問いかけてくる、ここが面白いのだ。日頃から練習をたくさんすれば、ティーショットを真っすぐ飛ばす確率を上げることはできる。でも、大きく左右に曲げたときに林の奥深くの木の根元にボールが落ちるか、あるいは木に当たってフェアウェイまで出てくるかは誰もコントロールできない。パットを打った時も最後のひと転がりで入る時もあれば、カップの淵で止まってしまう時もある。木の根元にあるボールに向かって「何でツイてないんだ!」なんて怒ってみても、返事は帰ってこない。運が良い時もあれば悪い時もある、ただそれだけだ。そんなときには「次は良いことあるといいなあ」と願って無理のない打ち手を講じたほうが、結果的には目標(打った数を少なくすること)に近づくことが多い。


 さて、そのように考えるとゴルフのスコアなんてものは、①そもそもの才能や努力にとって獲得された技量と、②その時々の運・不運、さらに言えば③この運・不運に対する自らの受け止め方や対処法(ここが最も重要)、この3つの掛け合わせによって構成されている、と考えることができる。


 似たようなゲームに麻雀があるが、両者が中高年のエグゼクティブから支持を得られるのもこのあたりが理由だろう。 ゴルフや麻雀には人生の縮図みたいな面がある。わたしたちの人生には自らの力で到達、達成できることと、自分の力ではコントロールできないことが存在している。例えば入学試験での300点の合格者と、299 点の不合格者とには①の所持している学力の違いはなく、②・不運の違いがあるだけだ。


 人生において多くの人は何かを目指して才能を生かし、努力を行う。

 才能の差異や努力の差異は、結果の差異につながらないわけではないけれど、それだけが結果の差異を生み出すわけでもない。景気が落ち込んで就職氷河期に卒業する学生はいくら努力をしても、希望する会社に採用してもらえないわけだし、ひとりの学生が世の中の景気をコントロールすることもできない。コントロールできない運・不運の存在を認めること、それに対するスタンス(受け止め方や対処法)を確立すること、その上で次の目標に向かって歩を進めること、きっとそういうことなのだろう。ゴルフはそれなり勉強になる。


 過去、頂点まで上り詰めたタイガー・ウッズは、いま賞金を稼ぐためにゴルフをしているのではない。自らが選んだ道を究め、自己実現を計ることがおそらく彼の目的だろう。お金を稼ぐだけなら、別の方法があるわけだし。そして彼はその副産物として、人々を魅了することで社会への貢献を行っている。わたしたちはゴルフで彼のようにはなれないが、彼と同じことは実現できる。それは単に専門領域が違うというだけの話なのだ。一度きりの人生において、わたしたちがそれぞれの専門領域に気づき、それを極めることが自らと社会の幸福につながる、試合観戦ができなかった今年のマスターズの学びだ。


株式会社鎌倉新書
代表取締役社長兼会長CEO 清水祐孝