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会長コラム“展望”

社会 2015.11.27

手段はいつも目的化する

 パリで悲惨なテロ事件が発生した。

 無辜の人々に危害を加えるという行為は、許されるべきものでないことは当然のこと。しかし、そんな当たり前の理屈が通用しないからテロなのだ。テロリストの目指すところは、イスラムの神を風刺し、自らの支配地域に空爆を行う人たちの国、フランスに大きなダメージを与えること、それが人道的見地からどうかなど彼らは考慮する分別など持ち合わせていない。

 テロリストたちは、「神を侮辱した」「支配地域に空爆を行った」などのフランスの国や国民が採った行為に対する報復だと主張する。だけど、自分たちが信じている神の風刺画を描くことまでは他人の行為だが、それを侮辱、冒涜だと考えるのは受け止める側の思考の問題である。テロリストたちが、「大切な神さまをそんな風に描くなんてあり得ないよ。でも、人それぞれいろんな考え方があるなあ、僕らの考えは全く異なるのだけどなあ。まあ、僕らは僕らの考えを多くの人に伝えていこう」と考えればいいだけのはず。支配地域が空爆されたことだって、もともと、それらの地域の法と秩序を犯したのは自分たちだから、世界中の多くの人から出ていけと言われるのは、極めて当たり前のことである。このように、筋道立てて考えれば、「神を侮辱した」「支配地域に空爆を行った」だから報復だ、などとは恥ずかしくて言えないはずである。もちろん、そんな理屈をきちんと考え、理解できるのであれば、これほどの大惨事は起こっていないわけだ。

 さて、こういった出来事を目の当たりにする毎に感じるのは、「ほとんどの人は物事を深く考えない」こと、そして「手段はいつも目的化する」ということ。良くは知らないが、ISのもともとの目的はおそく、理想とする国家の樹立であろう。しかし、彼らがここが良いと考える場所は、すでに世界から認められたイラクやシリアという国の領土だし、当たり前だが譲ってはくれない。そこで、仕方がないから力ずくで領土を奪う。すると、それはダメよと欧米やロシアから反撃が加えられる。その反撃に対して、テロで応酬することを画策する。この時、彼らの論理は空爆したから、報復するとなり、自分たちが最初にとった行動は棚上げになっている。そして彼らの目的は、理想の国家の樹立から、テロ行為で目先の敵(例えばフランス)にダメージを与えることに移っている。ヨーロッパ各国に潜伏する、イスラム教徒の不満分子やISの戦闘員は、「神を冒涜した」「空爆を行った」という事実に反応し、その背景を客観的に考えてみることはしない。

 いっぽうのオランド大統領も、首都がテロ行為受け多くの国民が犠牲になり、怒りの感情がピークに達する中で温厚な選択肢を取ることは、指導者としてできるわけがない。ほとんどのフランス国民の望みは、世界の秩序を以前の状態に戻すことではなく、ISを壊滅させることになっているはずだ。

 結局、IS、フランス双方の敵対感情は増幅し、ISに対する攻撃と、ゲリラ的な報復活動が続くことになるのだろう。ISによる報復が今後も奏功するとも思えないが、いっぽうでISを武力によって完全に壊滅させることは難しそうだ。したがって、事は長期化すると考えるのが常識的なところか。さて、わたしは攻撃されたら仕返しをするという多くのフランス国民の持つ感情を間違っていると思っているわけではないし、むしろそれが人の感情として普通だと思っている。しかし、そうではあってもこんな時にこそ短絡的にそこに行くのではなく、一度深く考えてみるべきだとも思っている。

 空爆を受けるISの戦闘員の短絡的な思考にはものすごいパワーがあるのと同じく、テロ攻撃を受けたフランス国民の感情にも大きなパワーがある。いっぽうで、どうしてこうなったのだろうという分析と、手段が目的化してしまっていることについて冷静に知っておくぐらいは知恵として学んでおくことが必要でないかと思うのである。

株式会社 鎌倉新書

代表取締役社長 清水 祐孝