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会長コラム“展望”

社会 2013.11.30

虚偽表示問題から学ぶこと


 最近、著名なホテルやレストラン、百貨店等で供されるメニューについて、使用されている食材が虚偽であるとの報道が相次いでいる。一連の騒動の発端となったホテルでは「意図的に行ったものではない」としたものの、騒ぎは簡単には収まらず、結局は社長が責任を取って辞任することになってしまった。さらに報道が過熱すると、他のホテルやレストラン、百貨店においても虚偽表示の情報を隠すことへのリスクに耐えきれず、たくさんの企業が自社の実情を公表し始めた。たぶんこのようなことは業界においては半ば常識であったのだろう、とすら感じられてしまうほどだ。
 
 さて、このような報道は特定の一社だけが行っていた不正であるならば、その企業が世間のバッシングを集中して受けることになるのだろうが、当たり前のように数多くの企業が行っていたとなると、バッシング効果が分散されて効果がなくなってしまう。結果として、このどさくさのタイミングを利用して発表した各社からは、トップの引責辞任だとか、損害賠償の話だとかは聞かれなくなってしまった。
 いっぽうの消費者も、虚偽の表示に対しては圧倒的に「けしからん!」という反応を示すものの、じゃあそんな店舗を利用しないかといえば、そうでもなさそうだ。その証拠に虚偽表示が判明した後も、各店舗からお客が大きく減ったという報道は聞こえてこない。では、消費者は非難の目を向けるいっぽうで、どうして消費行動を変えたりしないのだろう。
 
 例えば問題の発端となったホテルではメニューで「芝エビ」と表記されていたものが、安価に仕入れることが可能な「バナメイエビ」、「車エビ」との表示だったものが「ブラックタイガー」だったという。しかし、ほとんどの消費者は正しい表記をされたところで、「このお店は、正しい表記をしてくれる良いお店だ」と感じるだろうか? 
 答えはノーだ。むしろ、そんなことをされたら余計な判断材料が増え、かえって混乱してしまうだろう。ほとんどの消費者は「バナメイエビ」という食材に関する情報を持っていないのだ。「このメニューにはバナメイエビが使われています。あとはあなたが判断してください」そう言われて喜ぶ顧客がどこにいるのだろうか。
 
 消費者にとって必要なことは、食材に対する詳細かつ正しい情報ではない。使われている食材の一つひとつについて詳細な情報を提供されてしまったら、選択に膨大な時間が必要になり、かえって混乱するだけである。供給者と消費者に情報の非対称性がある中で、消費者が少ない情報をもとに判断ができるのは、お店に対する信頼感、安心感が形成されているからである。

 前述のホテルでは、消費者がそのホテルの良い評判という情報を持っていて、そのうえで雰囲気やサービスが実際に良いと感じれば、そこに価値を見出すことができるわけだ。食材の表記は大して重要ではなく、味がきちんとしたものであれば消費者は満足して、ホテルでのひとときを過ごすことができる。おそらくこのホテルでは、虚偽の表示を行おうという意図はなく、消費者にメニューをイメージしやすいようにと考え、あのような表記をしてしまったのだろう。結果的に虚偽の表記となったことに弁解の余地はないが、そのあたりを消費者も理解しているから、おそらく消費者の足がこのホテルから遠のくことも起こらない。
 
 供養に関連する葬儀や仏壇仏具、墓石の業界も消費者に直接サービスや商品を販売する仕事を行っている。特に仏壇仏具業界においては、公正取引協議会を発足させ、消費者に虚偽の表示が行われないように業界挙げて取り組みを行っている。もちろん、そのような取り組みが大切であることは間違いない。しかし、正しい表示を行えば消費者からの信頼が得られるのかというと、それは本末転倒である。
 消費者は木材や工法のプロではない。だから正しい表示を行ったところで、それだけでは不十分なのだ。もちろん、虚偽の表示を行ってよいわけはないが、肝心なことは、お店の安心感、信頼感をどのようにつくりあげるかであることをこの一連の問題から学ばなければならない。
 
株式会社 鎌倉新書
代表取締役社長 清水祐孝