2026/07/01
ビジネス
「Q・半導体回路はどこまで小さくなるか」
「A・究極の答えは物理学ではなく経済学だ。限界はない」
先日、朝の経済ニュースを見ていたらこんなシーンに遭遇した。質問しているのは、テレビ東京の経済番組の担当者で、答えているのはオランダの世界最大手の半導体製造装置企業であるASMLの技術担当の上級副社長である。
AIやロボティックス等の加速度的な進展を背景に、半導体が過去にないほど脚光を浴びている。一企業であるAI半導体最大手NVIDIAの時価総額は日本の国内総生産(GDP)を上回るほど巨額となり、日本においても、少し前までは身売り先を探していたキオクシアが時価総額トップに躍り出たりしている。これらを筆頭に、半導体関連銘柄は世界中で大賑わいの状況だ。
さて、冒頭で引用させていただいた上級副社長の所属するASMLは、もともとはオランダのフィリップス(日本でいえばパナソニックのような総合電機メーカー)からスピンオフしてできた会社で、最先端半導体の製造に不可欠な露光装置を世界で唯一量産し、市場を独占している企業である。時価総額は日本円で100兆円を超えているというから、これまた超がつく巨大企業である。
ではここで、半導体の微細化へのチャレンジの歴史について書いておこう。私がAIで調べてみた結果から少し引用する。
半導体の微細化とは、電流のオン/オフを切り替えるスイッチである「トランジスタ」のサイズを小さくする技術です。現在、半導体業界は2ナノメートル(nm)やその先のオングストローム(Å)世代の量産を目指し、物理的な限界に挑んでいます。
すでに微細化は髪の毛の7万分の1の細さ、あるいは原子数個というところまできていて、物理的には限界に達しているという。冒頭のテレビ局の担当者の質問は、そのことを問うたものだ。これに対する「技術担当の役員」の返答が実にカッコいいではないか。この回答は、私の解釈を加えてかみ砕くと、このように変換できる。
半導体の微細化は物理学的には限界まで到達している。しかしながら、技術進化の歴史は、常にその時々の常識的な限界を乗り越えてきた。だからニーズがある以上は、現在の物理学的な限界を乗り越える日が必ずやって来るのだ。
とまあこんな感じだろう。
話は変わって50年前、わたしは小学校の卒業文集で、当時の担任の先生に「あまのじゃく」と評された。子どものころから常識的なところに背を向ける習性はあったようで、そのことは自覚していた。おそらく、それはわたしの長所だよ、と先生は言いたかったのだろうが、子どものころのわたしにとっては、人と違うってことはダメの烙印を押されたような気がして、ショックだった。
でも大人になって、特に経営者になって、物事を単純に受け入れるのではなく、いったんいろんな角度から考えてみるクセがあるってことは、自分の強みだなと思うようになった。常識的な発想にとらわれないことをやってみた結果、それが意外とうまくいったりするような経験を何度か経ていくうちに、根拠のない自信が湧いてくるようになってきた。「なるほど、できないなんて決めつけちゃいけないんだな」「ゴールをいつもイメージしていれば道は拓ける、たいていの場合は」と常日頃から信じている。
だから、「究極の答えは物理学ではなく経済学だ。限界はない」という言葉は、強く心に響いた。その通りなんだ。「それは難しいです」「無理だと思います」と子供のころから常識を刷り込まれた優等生社員や子どもは言う。それを怒ることは簡単だけど、「できないなんて決めつけるな」ってメッセージを流し続けることが重要だと思う。そうしていると、どこかでそれリアルに経験してもらうタイミングがやって来るはずだ。非常識なチャレンジに成功することを経験すれば彼らも、その部下や子どもに向かって言ってくれるだろう。
「できないなんて決めつけるな」と。
株式会社鎌倉新書
代表取締役会長CEO 清水祐孝
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