2026/06/01
社会
日本の株式市場が活況を呈している。日経平均はこれまでの最高値を更新し、5月13日には6万3千円台に突入した。新年のスタート時点ではおおよそ5万円だったから、半年足らずで25パーセント以上も上がっていることになる。直近では国際情勢が混迷を深めており、その影響からエネルギー価格が高騰するなどのさまざまな問題が横たわる中にあって、経済の鏡であるはずの株式市場の絶好調をどう解釈すればよいのだろうか。
こうした状況に対しては、さまざまな講釈が経済・金融の専門家によって付けられている。企業業績の拡大が当分続きそうだという予測であったり、高市政権下での積極財政に対する期待だとか。そうした講釈はもちろん的を射ているのだろう。ただ、その根底には想像以上のインフレが進行しているってことがあるようにわたしには思えるし、それが長期にわたって続くのではないかってことがあるのではなかろうか。そして、投資家や経営者もこのことを今日強く意識すべきだと思うのだ。
先日、朝刊を開いたらそこに不動産のチラシがはさまっていた。何気なく見てみるとそれは、わたしが住んでいるマンションの売却物件であった。付けられた価格は7年前の購入時の2.5倍。売れたかどうかはわからないが、不動産屋さんに聞いてみるとだいたい相場だという。つまり大都市圏の不動産は、2019年を100とすると2026年は250になっているということだ。ついでに株価がどうなっているのかというと、日経平均は同じく2019年のスタート時点がちょうど2万円、そして2026年のスタート時点は冒頭の通りだからこちらも、2019年=100に対して2026年=250となっている。ここ数年の資産価格の上がり方はかなり急激なのだ。
いっぽうの消費者物価指数を見てみよう。先月発表された2020年基準の消費者物価指数(総合)は、2020年を100として112.7と公表されている。ちなみにこれを2019年のものと比較してみても、当時はまだインフレになっていなかったからほとんど変わらないだろう。資産価格とは異なり2%程度が物価安定の目標とされる物価指数上昇率はここ数年は、良くも悪くも適切にコントロールされているように見える。しかしながら、継続的な円安やイラン情勢によるエネルギー価格の高騰などで、今後の先行きは不透明だ。その証拠に4月の企業物価指数は先んじて前年同月比で4.9%上昇、これは3年ぶりの高い伸びだという。電気・ガスやガソリンへの補助金など政府が物価上昇を抑えるために行っている施策も近いうちに財源が枯渇しそうなことを考えると、ますますインフレの加速は現実味を帯びてくる。投資家的にいえば、物価の上昇を抑えきれなくなる日が到来し得ることも考えておくべきだろう。
いっぽう経営者としては、物価の上昇を凌駕するだけの賃金の上昇が確保できれば従業員の困窮を避けられるわけであるから、これを強く意識して経営のかじ取りを行わなくてはならない。価格競争力のある付加価値の高い商品やサービスを提供し、粗利益をしっかり確保するとともに、生産性の向上を推進することで、インフレ、いやもしかするとスタグフレーションの時代にも、企業は生き残っていかなくてはならない。
さて、わたしにはこのところの株式や不動産等の資産価格の大幅な上昇は、それ自体が本格的な長期インフレの時代を暗示しているように思えてならない。もちろんそれが適切な範囲に留まるものであるのなら悪い話ではない。けれど株価も物価も為替も、上にも下にも、楽観にも悲観にも、どちらの側にも行き過ぎるのが世の常であることを考え合わせると、注視しておかなくてはなるまい。
最後に、別の問題を提起して終えたいと思う。今日起こっている資産価格の大幅な上昇は、それ自体が消費に対してプラスの側面はあるけれど、いっぽうで(資産を)持つ者と持たざる者の格差を広げる方向に働く。このような状況が続くと、多くの人が社会に不満を持ち、これが社会を不安定にさせる。アメリカ型の本格的な格差社会の到来だ。大多数の国民の不満を束ねるポピュリストが登場し、国内や世界をぐちゃぐちゃにしていることは、わたしたちが日々目にしていることでもある。こちらもヤバいかも。
株式会社鎌倉新書
代表取締役会長CEO 清水祐孝
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