会長コラム“展望”

今日の出版メディア企業のビジネスとは

2022/04/01

個人的価値観

今日の出版メディア企業のビジネスとは

技術⾰新が進み情報伝達の⼿法が多様化する今⽇の社会の中で、出版メディア業界は恒常的なマイナス成⻑を続けています。その市場規模はピークの1996年に2兆6500億を付けた後、年々低下の⼀途をたどり、直近の推計では1兆6000億円程度(出版科学研究所)になっているようです。

しかしそのような中にあっても、例えば⼩学館、講談社、集英社、KADOKAWAといったような⼤⼿企業については、業績は好調であるといった調査機関のレポートに⽬に触れる機会がありました。業界が構造不況に陥り、多くの出版社、問屋はたまた書籍⼩売に⾄る、川上から川下までの企業にとって逆⾵の状況が続く中で、これら⼀部の企業はなぜ好調を維持しているのでしょうか。

この現象をひとことで捉えるなら、それは業界のビジネスモデルの変化というのが正しいでしょう。業績好調の⼀部の⼤⼿出版社、いやメディア企業というべきでしょう。このような企業は、以前は有望なコンテンツを⾒出し、それを漫画や雑誌、書籍といった紙媒体を販売することで収益を上げていました。しかし今⽇では、有望なコンテンツを⾒出すまでは同じだとしても、そのコンテンツの権利をグリップ、それらを紙やオンラインでの漫画で売り、続いてテレビアニメで、ゲームで、映画で売った挙げ句、キャラクターグッズを作ったり、それらの権利を海外に販売したりして収益を上げる。このようなビジネスを展開しているのです。

技術⾰新によってコンテンツの配信手段が広がり、グローバル化によってユーザーが広がった結果として新たなビジネスの可能性が広がり、そこに積極果敢に投資を⾏ってきたということでしょう。出版社はさまざまなコンテンツや情報を創り上げ、それを求め、価値を⾒出すユーザーに届けることによって収益を上げるビジネスを⾏っています。これが以前であればもっぱら紙媒体を通して⾏っていたわけですが、今⽇では⼀部の優れた出版社はまさにメディア企業化し、収益の上げ⽅が多様化しているのです。

さて、ここからは鎌倉新書の話に戻してみます。私たちは、超⾼齢社会が進展するわが国において、その中⼼層と⾔える⾼齢者とその周辺に向けたさまざまな情報を提供するメディア企業です。そしてこの巨⼤なポテンシャルのある市場から⼀歩も出るつもりはありません。なので「何をやっている会社なの」と聞かれれば、「終活メディア」であると答えます。しかしながら、「収益をどこから上げるのか」と⾔う問いに対しては、前述の⼤⼿出版社のようにもはや紙媒体で販売によってではなく、私たちの場合であれば情報提供に付帯するさまざまなサービスをユーザーや事業者に提供することで収益を上げる企業と⾔うことになります。

このようにメディア企業というのは、あくまでも「ユーザーの求める情報を適切な媒体を通して提供する」という活動を行っているものの、ビジネスとしての収益を上げる⽅策は過去とは⼤きく異なり、紙媒体を販売するビジネスではなくなったと申し上げたいのです。私たちのコンセプトはメディア企業でありサービス業ではありません。メディア企業として提供する価値は「情報」であり、その届け⽅はWEB、紙媒体、SNS、動画、はたまたセミナーなどその⽅法論はユーザーに合わせてさまざまであると考えています。

ということで私たちは改めてわが国で唯⼀無⼆の終活メディア企業として時代にマッチした⾰新を続けていきたい、そのように考えているのです。


株式会社鎌倉新書

代表取締役会長CEO 清水祐孝