会長コラム“展望”

企業はどうやって生きていくのか

2013/05/31

組織

先日、知り合いの小売業の経営者と仏壇メーカーの合同展示会でばったり行き会った。そこで少しばかり話し込んだのだが、その中で彼はある仏壇メーカーについて、「近年いいな、売れるな、と思えるような商品のラインナップとてもが充実しており、他社と比較しても抜きんでている」という評価を与えていた。それを受けて、筆者は「そうだとすれば、その会社に人材が揃ってきたということですね」と応えておいた。

さて、今回は戦後からの我が国の消費財をつくる製造業の推移とパターンをとても大雑把にみてみよう。終戦からおおよそ70年、我が国は経済的には最初の45〜50年は成長期、残りの20〜25年は停滞期ということができる。成長期においては、「需要>供給」という図式が成り立っていた。この時期は買いたい人はたくさんいるわけだから、商品に新規性は必要ない。たくさん造る、たくさん売る、この2つの能力を磨くことこそが企業が成長するために必要であった。ところが、たくさん造って、たくさん売ろう、という行為を多くの企業が続けていくと、「需要>供給」という図式はどこかで逆転し、「需要<供給」となる。そうなってくると本来であれば、たくさん造って、たくさん売る能力は邪魔になる。でも、企業はたくさん造るために投資をしてきた工場や、たくさん売るために雇い入れたヒトを捨てることはできない。だから、「需要<供給」という図式に時代が変わっていても、その企業行動は変わることはない。

さて、たくさん造って、たくさん売りたい企業が、「需要<供給」という旺盛な需要がなくなった時代にどういう行動をとるのか。それは「よそから買うのを止めて、ウチから買ってください」ということ、つまり少なくなったパイの奪い合いを開始する。一方の需要側(お客さま)にとってみれば、昨日まで買っていたところをやめて、新たな先から購入するとなると、そこには「買う理由」が必要になる。お客さまは聞いてくる、わざわざ「あなたから買う理由は何なの」と。

「買う理由」は大きく分けて2つである。ひとつは、よそで買うより安いこと。もうひとつは、ほかで買うより商品が良いこと。つまり、価格が差別化される仕組みがあるか、商品自体が差別化される仕組みがあるか、これが「需要<供給」という時代に企業が生き残るための条件である(さらに、売り方を差別化するという手法もあるが、本題と外れるのでここでは詳述しない)。

たくさん造って、たくさん売りたい企業は、「価格が安いから、ウチで買ってください」と言って、販売量を確保する。確かにたくさん造れば企業は、製造コストを安価にすることができるし、たくさん売る企業は、販売効率が良くなるからこれもコストに優位性が築ける。そして、これらのコスト競争力を武器に競合他社との差別化を図る。だけど、このような仕組みが築けるのは、ひとつの業界に1社か2社程度である。

従ってそれ以外、つまり価格が差別化できない企業は、生き残るためには商品自体を差別化する仕組みを作らなくてはならない。では、商品自体を差別化するにはどうすればよいのだろうか。既存の商品を造り続けるのではなく、新たな商品を生み出すには工場より大切なものがある、人である。つまりは人をつくることと、それを継続的に続けることが商品を差別化する必須の条件である。一時的には外部からデザイナーを連れてきて商品づくりをする場合もあるが、これは模倣されやすいという欠点がある。時間を掛けて創り上げてきたものは、模倣するにも時間がかかるが、短期間で築いたものは、短期間に模倣されやすいのだ。

結局のところ商品を作り出すのは人。モノづくりにこだわりを持つ企業風土を作り出し、それを実践する人(社員)を揃えること、そのことを継続させることが、「需要<供給」という現代において、企業が成長するための有力な方策である。

冒頭の経営者の話は、おそらくそのような企業の話である。商品が揃ったというよりも、人が揃ったのであり、その結果として商品が揃ったのである。人が揃うと企業は強い。商品をマネされても、また新たな付加価値を伴う商品を造れば良いのだから、「マネはけしからん」などと言う必要もない。

価格を差別化する企業、商品を差別化する企業、これらの2つのタイプの企業は、たとえ市場が縮小傾向にあったとしても存在意義を失うことはない。それに対し、どちらもできない企業は次第に顧客が離れ、企業としての存在意義を失っていく。蛇足だが、2つのタイプの企業は直接的な競合関係にもならない。提供する価値が異なるからで、競合するのは同じタイプの企業同士である。

「言っていることは分かるけど、現実はねぇ」という声が聞こえてきそうだ。でも、これは本当の話であるのだから、信じて粘り強く続けていくことができるか否かなのである。

以上、マイケル・ポーター先生より分かりやすいお話でした。


株式会社 鎌倉新書

代表取締役 清水祐孝