会長コラム“展望”

個人の問題、企業の問題、それとも日本社会の問題?

2023/11/01

個人的価値観

個人の問題、企業の問題、それとも日本社会の問題?

最近の日本社会の中で最もニュース性が高いのが、ジャニー喜多川氏による性加害とハラスメント問題であろう。わたし自身はテレビもほとんど見ないし、芸能ネタにも疎いのだが、どうやらこの問題は芸能ネタではなく人権問題や企業ガバナンスやコンプライアンス、もっと広い意味では日本社会の後進性を象徴したような事例であるように思うので掘り下げてみたい。


この問題はひと言でまとめると、ジャニーズ事務所のオーナー経営者であった故ジャニー喜多川氏が、長期間にわたって事務所に所属する青少年のタレントに対して性加害やハラスメント行為といった人権侵害を行っていた、というものだ。しかし、問題はこれだけではなく、そこを分けて議論することが肝心なように思うのだが、報道の論調や社会の受け止め方はそうはなっていないようだ。自分なりに考えてみると次のようになるのではないか。


①ジャニー喜多川氏が、タレントとして大成したい青少年の夢や希望を利用して、性加害およびハラスメントを行っていたという個人の犯罪。

②そのような犯罪が企業内で行われていたことを認識していたにもかかわらず、そこに加担あるいは隠ぺいを長期にわたって行っていた(以前の)ジャニーズ事務所という企業の問題。

③社会的に影響力の大きいジャニー喜多川氏の犯罪について、告発本や報道によってたびたび問題提起がなされていた、あるいはそうした情報が流布されていたにもかかわらず、それらを調査・報道が適切に行われていなかったこと。(1999年に週刊文春がこの問題について報道キャンペーンを行ったことに対してジャニー喜多川氏側が文春側を提訴、2004年には最高裁で記事が真実であることが確定したというが、これについてはマスコミが黙殺したという。)

④同様にそうした中で、ジャニーズ事務所との取引を番組や広告での起用を通して行うことでそのような体質の企業に加担してしまった、マスメディアや大手企業の問題意識。(これについてはネスレ日本元社長の高岡浩三氏が、在職中にガバナンスとコンプライアンス規定の観点から、ジャニーズのタレントをCMや販促に起用しなかったという報道がある。)


最近行われた記者会見や報道に接していると、このような本来分けて考えるべき論点がごっちゃになっているように感じる。笑ってしまうのが、記者会見での質問者を公平に扱わなかった、なんていう報道。問題の本質からは全く外れているのに、そんなことが目一杯報道されているのは滑稽に思える。


この先、補償を行う会社とタレント事務所が分離され、過去の問題についての解決が図られていくのだろう。いっぽうで、グレーゾーンとも言うべき③④の問題については議論が深まらないままだ。ここではマスコミや大手企業の問題じゃないかなんて指摘してみたが、突き詰めれば遠慮、忖度、まわりと同じ行動、といった言葉に象徴されるような日本というムラ社会の後進性が本質的な問題なのかもしれない。こうした事件をきっかけに、そのあたりまで議論が深まっていくと良いと思うのだが、なかなかそこには至らないようで・・。


株式会社鎌倉新書
代表取締役会長CEO 清水祐孝