会長コラム“展望”

僕はオミクロン

2022/01/24

個人的価値観

僕はオミクロン

僕の名前はオミクロン、正式名称はSARS-CoV-2と呼ばれるウイルスの一族なんだ。僕たちの最初のご先祖さまが生まれたのは2019年、中国の武漢が出生地だと言われているようだけどはっきりしたことは良く分からない。2020年の初めに中国を皮切りに人間に寄生することで仲間づくりに成功した僕たちは、その後も彼らが世界中に移動することを利用して仲間を爆増させたんだ。

僕たちの仲間が増えたことはとても喜ばしいことだったけど、人間たちにとっては甚だ迷惑な出来事だったようで、僕たちは人類の目の敵にされてしまった。だけど、僕たちは人間を病気にさせようだとか、ましてや死に追いやろうなんて考えてはいないんだ。僕たちは単に仲間を増やして繫栄したいだけ。進化論によるとすべての生き物は種を維持拡大させることを目的として進化しているわけだから、それは僕たちも同じ、そこを勘違いしないで欲しいんだ。

当初の僕たちの仲間の持っていた性質は、寄生させてもらっている人間にとっては毒が大きすぎたようで、高齢者や病気を抱える人を中心に多くを死に至らしめてしまった。このことは僕たちにとって大きな反省点だった。だって人を死に至らしめたりしたら寄生することができなくなってしまい、僕たちの繁栄も覚束なくなってしまうんだもの。

だから、僕たちは種を繁栄させたい一心で、アルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株などとその性質を進化させてきた。そんな中で最近になって生まれた僕たちオミクロン株は種の更なる繁栄が期待できる優秀な進化系だと自負しているんだ。さっきも言ったように、僕たちはただ種を繫栄させたいだけなんだから、寄生する人間たちが死んでしまっては元も子もなくなる。そして、あまりにも毒性が強いと人間から目の敵にされて、僕たちの増殖を阻むワクチンや治療薬の開発が進んでしまう。また人の接触がなくなると僕たちが増殖するチャンスも阻害されてしまう。そこで僕たちオミクロン株は進化して、弱毒化という戦略を取ったんだ。弱毒化すれば無症状の感染者が増える。そうすれば健康な若者や子どもを通して学校や家庭内で仲間を増やすことができる、そんな作戦なんだ。お酒の出る飲食店で増やそうなんて手口はもう古いよ、僕たちは常に進化しているんだから。そして弱毒化することで、人間も僕たちをやっつけようとするのではなく、共存をしようと考えてくれると思っているんだ。

その作戦は今のところ当たっているんじゃないかな。最近、僕たちの仲間は再び拡大して、世界中で感染者は爆発的に増えている。毎日、新規感染者数が報道されているけど、間違いないで欲しいんだ。僕たちの仲間の数はそんな数字よりよっぽど多い。何故なら無症状やほとんど症状のないために検査をしない人がたくさんいる。さらに、軽い症状であれば単なる風邪かもしれないわけだし、検査を受けて周囲から過剰な反応を招くよりも、治癒を待ったほうが良い、と判断する人もたくさんいるからね。そんな中で新規感染者数のみを大々的に報道するなんて、人間って馬鹿だなぁって思っちゃうよ。

最近になってアメリカや欧州の国々はそのメッセージに気づいてくれたようで、僕たちの勢力拡大に対しておおらかな対応を示してくれているように思う。だけど日本はそうはいかないみたいだね。すでに僕たちの仲間は国内にたくさんいるというのに、海外からの外国人の新規入国を停止して、何の意味があるんだろうね。そのうえ抜け漏れだらけの新規感染者数に過剰反応して、またまん延防止重点措置を取っているようだね。僕たちは無症状やほとんど症状がない感染者を通した拡大戦略を取っているのだから、そんなことしても得られる効果は限られている。経済的なダメージのほうがよっぽど大きく、リスクとリターンが全く釣り合っていないと思うよ。

いい加減な新規感染者数よりも、重症患者数や死亡者数を管理、そこにしっかりと対応することだよ。軽症の人に対して「感染力が強いですから」なんて言って入院させ、病床使用率を上げたり、税金の無駄遣いをしたりするのはどうかな、と思うよ。政治は僕たちの繁栄(=コロナ騒動の長期化)によって利益を得る人たちを見極め、国民に無用の不安を煽らないようにして欲しいな。そもそも日本人は年間140万人程度が亡くなるのだから、僕たちが原因になる比率はごくわずかだということもちゃんと国民に伝えてくれないかな。そして、早く先輩のインフルエンザのように僕たちも人類と共存共栄をしていきたいな。進化論の観点から弱毒化のメッセージを受け止めて、対立するのではなく協調してお互いがハッピーに生きていかれるように方向転換をして欲しいんだ。

※科学的な根拠はありませんが、想像をもとに書いてみました、当たらずとも遠からずでしょ。



株式会社鎌倉新書
代表取締役会長CEO 清水祐孝