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会長コラム“展望”

組織 2015.06.29

宣言できる人、できない人

 3月のある日、私たちの会社のある社員が朝礼で全員を前にこう宣言した。「3ヶ月で体重を67キロから60キロまで減らします。達成出来なかったら坊主になります!」(文脈からお分かりの通り、ここでの坊主は髪の毛を短くするということで、本当のお坊さんになるのではない)と。
 そこから3ヶ月、彼は同じ朝礼の場で宣言通り体重が60キロを切ったことを報告した。パチパチと拍手が起こる中で、私は大学を出て社会人となった当時の上司のことを思い出した。

 その方は社内でもトップクラスの営業課長で、直属の上司として私のような新人を教育する役割でもあった。プレイングマネージャーってやつだ。当時、課には毎日のように大きな売上ノルマが課せられていて、5、6名の営業マンがその数字を達成するためにお客さまにセールス活動を行っていた。ノルマは達成できる日もあるが、まったくダメな日もある。たいていの場合、翌日の数字の目星をつければ、一日の仕事が終了するというパターンなのだが、見込みが立たない日も当然ながら数多くあるのだ。「いやー、明日は厳しいなあ」という空気が社内に流れる中で、課長であったその上司は残りのすべての数字を自分がやると皆の前で宣言するのである。そして、仕事を終えた部下たちを引き連れて酒を飲みに出かけ、「明日も頑張ろうぜ」と彼らを鼓舞していた。売上の当てがあるのかと恐る恐る聞く私に、上司は「当てなんてあるわけない」と笑って答えていたことを思い出す。
 ところが翌日になると、上司はどこからか大口の商いを決めてきて、不思議なことに予算はことごとく達成されるのである。若い私には理解できなかった。上司はなぜ自分を追い込むのだろう、そしてどうして達成できてしまうのだろうか、と。そのカラクリに気が付くのはかなり後になってからである。当然、上司は打ち出の小槌を持っていたわけではない。

 デキる営業マンは知っているのだ。「いついつまでにこれこれをやります」。そう宣言してしまえば、達成の確率が高まるという事実を。カラクリはこうだ。宣言した途端、口から発したその言葉は、耳を通して本人の脳に伝わる。脳には同時に、周りの人たちがその宣言を聞いている、つまり「失敗は許されないぞ」という情報もインプットされるわけだ。すると脳はコンピューターのハードディスクのようにカタカタ動き出して、宣言を達成するために必要な情報を高速で集め、アイデアを生み出したり、本人に行動の指示を出したりする。結果として達成の確率がグンと上がるというわけである。

 デキる人も最初から無理な宣言をしてきたわけではないだろう。恐らくは小さなチャレンジからスタートしている。そして、小さなチャレンジが成功すると、脳はだんだん麻痺してきて、大きなチャレンジを受け入れることも恐れないようになっていく。このようにしてトップセールスマンはつくられていくのだ。
 「営業マンは、行動力、提案力、コミュニケーション能力……を磨きましょう」などと本には書いてあるが、そんなものを読んでも成績が上がるわけではない。もちろん、そのような能力は必要ではあるが、結局はそれらを生み出すのは脳であり、脳を適切に働かせる術を運良くマスターしてきた人のみが、卓越した成果を生み出す。これが真実なのだ。

 フツーの人は何かを達成しようと思っても、人前で宣言することを恐れる。あるいは宣言しても期日を付けない。出来なかった場合のことを考え、脳がやめろ!という指示を無意識のうちに出しているからだ。脳をコントロールするか、脳にコントロールされるか。つまりはここが分かれ目だということ。

 ダイエットを宣言した社員は、その間に得た学びや気づきについて朝礼で報告していたが、これこそまさにチャレンジの副産物である。こうして彼の成功体験は次の成功体験を連れてくることになるだろう。こんな社員が増殖すれば、会社はきっと健全に発展するのだが。さてどうやって増やそうか……。

株式会社 鎌倉新書
代表取締役社長 清水 祐孝